連載 DX × ITガバナンス| 第3回 DX推進の成功ポイントは何か?|横浜市|コンサルティング
連載 DX × ITガバナンス
第3回 DX推進の成功ポイントは何か?
DXに取り組まないことにより企業間のシステム格差が広がり、新しい技術を含めたITの活用が経営を大きく左右します。また、既存のレガシーシステムを使い続けることで発生する弊害も大きくなります。このため、「2025年の崖」から落ちないためにもDX推進が待ったなしの状況と紹介しました。
では、DX推進するにあたり、成功のポイントはどこになるのでしょうか?今回は「DX推進の成功ポイント」について紹介します。
目次
- 「DX推進ガイドライン」とは?
- DX成功のカギは「経営者の覚悟」と「人材の育成」
- まとめ
「DX推進ガイドライン」から読み解くDX推進のポイント
まずは「DX推進ガイドライン」を読み解きながら、「DX推進ガイドライン」が提示したDXの現状とDX推進のポイントを紹介します。
1. 「DX推進ガイドライン」とは?
「デジタルトランスフォーメーションを推進するための ガイドライン (DX 推進ガイドライン)」は2018年12月に経済産業省が発表したガイドラインです。ここには、「DX推進の現状」と「DX推進のポイント」がまとめられています。
経済産業省は、日本でのDX推進における現状の危機感から、2018年5月に「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」を立ち上げました。そして、2018年9月に同省がまとめた報告書『DX レポート~IT システム「2025 年の崖」の克服とDX の本格的な展開~』を発表しました。そして、同報告書で発表した「2025年の崖」は、多くの関係者に衝撃を与えています。また、同報告書ではDXを推進していくためのアプローチやアクションを示す必要性を提言しました。この提言に基づいて取りまとめられたレポートが「DX推進ガイドライン」です。
「DX推進ガイドライン」が示したDX推進のポイントとは?
「DX推進ガイドライン」では、以下の2つで構成されています。
- DX 推進のための経営のあり方、仕組み
- DX を実現する上で基盤となる IT システムの構築
まずは「DX 推進のための経営のあり方、仕組み」です。ここでは、以下の5点が提示されています。
- 経営戦略・ビジョンの提示
- 経営トップのコミットメント
- DX 推進のための体制整備
- 投資等の意思決定のあり方
- DX により実現すべきもの: スピーディーな変化への対応力
この中でポイントとなるのが「経営戦略・ビジョンの提示」です。
経営者が示すビジョンや戦略は、事業を推進する方向性を表します。そして、方向性が見えるからこそ、「どのようなシステムが必要か?」、「それを実現するための技術は何か?」が検討できるのです。
一方、失敗ケースとして同ガイドラインは「戦略のないPoC の実行は疲弊を招く」と警告しています。
昨今はビジネスの立ち上げにあたり、PoC(Proof of Concept)と呼ばれる「新しい技術やアイデアが実現可能か、目的の効果が得られるのかを確認するための検証工程」を行うことが主流となっています。しかし、経営者からビジョンや戦略が提示されないまま、「AIを使って何かやれ」と部下に丸投げしてPoCを実行するケースが多くあります。このような「戦略なきPoC」は「羅針盤なき船」のごとく航海不能の状態となり、現場に疲弊を招くだけです。当然、DXの推進も中途半端で終わってしまいます。
もう一方の「DXを実現する上でITシステムの基盤の構築」です。これについて、「DX推進ガイドライン」には「体制・仕組み」と「実行プロセス」の2つに分けて以下のように示されています。
体制・仕組み
- 全社的なITシステムの構築のための体制
- 全社的なITシステムの構築に向けたガバナンス
- 事業部門のオーナーシップと要件定義能力
実行プロセス
- IT資産の分析・評価
- IT資産の仕訳とプランニング
- 刷新後のITシステム:変化への追従力
この中でポイントとなるのは「全社的なITシステムの構築のための体制」です。
「DX推進ガイドライン」には、経営、事業部門、情報システム部門などで構成されたチームで取り組み、成功を収めた例が紹介されています。一方、失敗ケースとしては、「ベンダー企業からの提案を鵜呑みする」ことをあげています。
この事例から分かるのは、「ベンダー企業に丸投げせずに自社でDXを推進できるかどうか?」です。自社の将来ビジョンを描いた上で、どのようにすれば実現できるかを一番分かっているのはユーザー企業自身です。このため、DX推進ガイドラインは、要件定義をベンダー企業に丸投げをせず、ユーザー企業が自ら要件定義を行うことを提示しています。
2. DX成功のカギは「経営者の覚悟」と「人材の育成」
「DX推進ガイドライン」を読み解くと、DX成功のカギなるのが「経営者の覚悟」と「人材の確保と育成」です。以下に具体的に解説します。
経営者がDX推進の覚悟を持つ
1つめは「経営者がDX推進の覚悟を持つ」ことです。
経営者には「DX推進という痛みを伴ういばらの道を進むか、巨額のIT投資を避けて崖から転げ落ちるか」の選択が求められます。
DX実現に向けたシステム投資を怠り、既存のレガシーシステムに対して部分的なシステム改修を続けると、ますますシステムが複雑となります。また、既存システムを長期にわたって使い続けることで、エンジニアの退職などにて一部のエンジニアしかシステム仕様がわからない「ブラックボックス化」が生じます。それにより、「システム改修に長時間がかかる」、「保守コストが高額となる」といったデメリットが生じ、やがて大きな負債となって経営を圧迫することになります。
「2025年の崖」を乗り越えるためには、「既存のブラックボックス化したレガシーシステムを刷新し、ビジョンや戦略に基づいてITシステムを全体最適化する」必要があります。そのため、経営者にはDX推進の必要性を理解した上で、システム投資に対する覚悟が求められます。
DX推進のための人材を確保し育成する
とはいえ、経営者がDX推進の必要性を理解してDX推進に投資を行うとしても、DX推進に必要な人材がいなければ実現することができません。
DXを推進するためには以下の3つのスキルを持つ人材が必要です。
- 課題の洗い出しと解決すべき課題の抽出
- 課題解決のためのデジタル技術の活用方法の理解
- PoCプロジェクトを推進する力
そして、その人材は社内に求め、育成する必要があります。それは、3つの理由からです。
1つめの理由は「本当に解決すべき課題抽出の観点」からです。本当に解決すべき課題は、現場から見つかることが多いのが一般的です。現場を理解しているのは社内の人材です。ITベンダーをはじめとした外部のコンサルタントが話を聞いたとしても、企業が抱える課題を本当の意味で理解することはできません。
2つめの理由は、「コストの観点」です。外部コンサルタントを活用する方法もありますが、社内人材の活用に比べて高コストになることが一般的です。また、社内事情を理解していないことも多いために課題の理解や解決策の立案までに時間がかかり、プロジェクトの長期化に伴うコスト負担が大きくなります。
3つめの理由は「システム保守の観点」からです。新しいシステムの稼動後に必ず発生するのが「システム保守」です。ところが、中心となって推進した人物が外部コンサルタントやシステムベンダーの場合、プロジェクト終了とともに社内からいなくなるのが一般的です。こうなると、刷新後のシステムに精通した人物が不在となるため、継続的なシステム対応が難しくなります。
以上の3つの理由から、「DXを推進するための人材を社内で確保し、育成する」必要があります。
3. まとめ
今回は「DX推進の成功ポイント」について紹介しましたが、いかがでしたか?
DX推進の成功ポイントは、「経営者の覚悟」と「DX推進のための人材の育成」です。経営者がDX推進の必要性を理解し、覚悟を持ってDX推進に必要な投資を行う必要があります。とはいえ、経営者の覚悟だけではDXを推進することはできません。DX推進のためには人材が必要です。そして、その人材は社内で確保し、育成することが必要です。
とはいえ、DXを推進するからといって、「ガバナンス(統治)なきDXの推進」は、結果的に失敗を招くことになります。
次回は「DX成功のためのデジタル・ガバナンス」について紹介します。
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